恋煩いの処方箋
「父さん。俺は亜子と和花を自分の手で幸せにしたいんだ。分かってくれるよな?」
同じ男として父親としてこの覚悟を理解してもらえる――そう疑いもしなかった。けれど、父は長く重い息を吐く。
「お前は沙也香さんと結婚するんじゃなかったのか。この間も学会の帰りにうちに挨拶に来てくれたんだよ、手土産を持ってな。本当によくできたお嬢さんだ。島津教授が自慢する気持ちもよくわかる」
沙也香が家に?父と会ったとは聞いていたがてっきり学会で顔を合わせただけかと思っていた。まさか実家へ行っていたなんてどういうつもりだろう。
「彼女とは別れたよ」
「復縁しなさい。お前の将来のためにも沙也香さんと一緒になるのが一番いい」
「勝手なこと言うなよ! 俺には子供がいる」
「子供は認知して養育費を払え。今の給料で足りなければ私が出す。慰謝料も用意しよう。結婚だけは絶対に認めん」
まさか反対されるなんて思ってもみないことだった。厳しいことは言われるだろうが必ず認めてくれるだろうと高をくくっていた。
「父さんが何と言おうと俺は亜子と結婚するから!自分の幸せは自分で掴む!」
俺はもう子供ではない。きちんと仕事をしているし、あと数年で専門医を取り医師としても一人前になれる。
「半人前がなにを言う! 親の庇護から抜け出せてもいない分際で結婚だと?お前はなにもわかっていない。医者として、将来のために誰を結婚相手に選ぶべきか考えろ!」
テーブルに五千円札を置いて父は立ち上がりラウンジから出て行ってしまう。