恋煩いの処方箋

「大和は知ってるんですか?」
「知らない。話してない。さすがに引くでしょ、付き合ってた女が父親に恋愛感情を抱いているなんて。あーあ、私が大和と復縁したがってるって誤解されたのは想定外だったわ」
 あっけらかんと話す沙也香さんを呆然と眺める。
「それを伝えにわざわざ来てくれたんですか?」
 彼女にとってなんの得にもならないことを。
「まあ、そうね。少しは悪いと思ってるから。誤解されぱなしは気持ち悪いし。それとあなたに会ってみたかったからかな。大和が本気で好きな女ってどんな子なんだろうって興味が湧いちゃって」
「興味、ですか」
 話の流れからあまりいい意味で使われていない気がして、私は思わず眉を顰める。けれど、沙也香さんはそんなことはお構いなとでも言うように話しを続ける。
「知ってると思うけど大和ってモテるのよ。それなのに誰とも付き合ったりしなかったの。酔った勢いで聞いたら地元に好きな人がいるって言うじゃない。それで私が忘れさせてあげようとした。でも無理だった。惨敗よ。だから、その子がどれだけいい女なのか見てみたかった」
「その人って……」
 私のことなんだろうか。
「あなたに決まってるじゃない! 今自分じゃないかも知れないと思ったでしょ」
 見透かされてしまった。沙也香さんは呆れたように「面白い人ね」と笑う。
「というわけだから、あとはあなた達で頑張って。結婚を認めてもらえるように」
 そう言って沙也香さんは私に背を向ける。これは彼女なりの誠意と受け取っていいのだろうか。
「あの、ありがとうございました」
 私は深く頭を下げる。沙也香さんは大和と復縁したいわけじゃなかった。それがわかっただけで私の心は救われる。
 
< 53 / 61 >

この作品をシェア

pagetop