絵画にキスした男

 愛というには十分すぎるのに、恋と呼ぶにはあまりにも未熟だった。

「……綺麗だ」

 ため息も出ないほどに、あなたは美しい。まさに絵に描かれたような人だ。そして僕というちっぽけな人生の中にある、唯一色を持った人。
 真っ黒な髪に、雪みたいな肌。透き通る瞳は、きっと誰もを魅了できてしまう。


「また、そんなこと言って。りょーくんは私が大好きなんだね」
「先輩は、どうしてそんなに僕を……」


 僕を、愛おしそうに見つめるんですか?なんて問うだけ無駄だとわかって口を噤んだ。

 あなたの綺麗なところに惚れたわけじゃない。否、容姿ももちろん好きではあるが。

 その透き通った瞳の奥にある暗闇に、どうしても心惹かれてしまうのだ。
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