天邪鬼な私は、人気者の彼が苦手です
「由乃ー、どうだった?」

恒一が、満面の笑みを貼り付けてこちらにやってきた。
頭の上にお花でも咲いていそうな顔だ。

『なんだあいつの顔。ニヤニヤしすぎてアホっぽいぞ』

鬼太が肩の上で鼻を鳴らす。

(ほんと、私の心の声を代弁するよね、鬼太って)

「恒一って、ドMだったんだねー。前の颯斗みたいに冷たくされるのが好きなんだー。へー、そっか、そっかー」

由乃が、わざとらしくうなずきながら恒一をいじり始める。

「ち、違うって! 俺はただ昔の颯斗が懐かしいだけで――」

「へぇー?」

にっこり笑っているのに、目が笑っていない。

『怖っ』

鬼太が肩の上で小さく身震いする。

(由乃って怒らせると一番怖いタイプだよね)

恒一は助けを求めるように颯斗を見る。

颯斗も、爽やかに笑いながらこちらにやってきた。


「数学、どうだった?」

颯斗が、まっすぐに聞いてくる。

「ありがとう。補講回避できた」

「良かった」

そう言って、笑う。

――優しい。

「じゃあさ、どっか行かない? 修旅メンバーで」

『は? だりー』

鬼太が即ツッコミを入れる。

「花火! 花火がいい!」

由乃は大はしゃぎだ。

(この颯斗が、普通になってるんだな……)

颯斗が笑うたびに、

私が好きになった颯斗の輪郭が、

少しずつ薄れていった。
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