天邪鬼な私は、人気者の彼が苦手です
ドンドン、と太鼓が鳴る。

提灯の灯りがゆらゆら揺れて、
人の波がゆっくりと流れていく。

「りんご飴食べたい!」

由乃が駆け出すと、恒一が慣れた様子で隣に並ぶ。

「転ぶなよ」

「子どもじゃないし」

言いながら、二人はりんご飴の屋台の方へ消えていった。

澪は、修学旅行で仲良くなった副班長と推しの話で盛り上がっている。
黒い浴衣が人混みの中でも不思議と目立っていた。


気づけば。

私の隣には、颯斗がいる。

人混みを避けて端に寄ったはずなのに、
いつの間にか、みんなとは少し離れていた。

「桜庭」

呼ばれて振り向くと、すぐ近く。

近い。

浴衣の袖が、かすかに触れた。

「人、多いな」

守るみたいな立ち位置。

(……何それ)

『ガードしてんじゃねーか』

鬼太が笑う。

「別に大丈夫だし」

つい、素っ気なく返す。

ほんとは、少しだけ嬉しいくせに。

颯斗は小さく笑った。
提灯の赤い光が、その横顔をやわらかく照らす。

「似合ってる」

ぽつり、と。

一瞬、何のことかわからなかった。

「浴衣」

さらっと付け足す。

心臓が一拍、強く跳ねる。

(ずるい)

「……ありがと」
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