幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。
 ◇

 そして、六時間目の後、やや気の抜けた休み時間。

 廊下側の席に座るなっちゃんが、窓越しに他クラスの女の子から話しかけられていた。
 たまにこんなふうに、なっちゃんに好意的な態度の子を見かけることがある。
 彼はそういう時、相変わらず誰に対しても人当たりが良くて、丁寧な笑顔を向けている。

 私はなぜか、その光景をあまり見ちゃいけないような気がして、いつも目を逸らすように気をつけている。

 今回も、なんとなく手元のノートに視線を落としていた。
 その時。

「朝井っ!! あの件、考えてくれた!?」

 女の子の背後から、ものすごくデカい声が割り込んできた。
 ビクッとして顔を上げると、そこにいたのは、小学校から一緒で、私も何度か同じクラスになったことがある、軽音部の男の子・嶋《しま》だった。

 会話を邪魔されたその子たちは、気まずそうに顔を見合わせて去っていってしまった。

「あー……」

 なっちゃんが、悩ましげな声を出す。

 そんなことはお構いなしに、嶋は一歩教室に踏み入り、なっちゃんの机の前に立つ。

「頼むっ! お前しかいないんだよ!」

 そして、ガッ! と額をなっちゃんの机に擦り付け、両手をパンッと合わせて、文字通り全身で必死に懇願し始めたのだ。

「…………」

 なっちゃんは、突っ伏した彼を見下ろしながら、数秒間「んー……」と渋っていた。

 やがて、短くため息をついたあと、言った。

「……わかった。やるよ」

「マジっ!?」

 勢いよく顔を上げた彼の瞳は、キラキラと輝いていた。

「サンキュー!!」

 そして、なっちゃんの手を両手でガシッと握りしめると、上下にブンブンと激しく振る。

「じゃあ、練習の予定送るな! ホントよろしくなー!!」

 そう叫びながら、突風のような猛スピードで走り去っていった。

 呆気に取られながらその光景を見ていた私は、思わず身を乗り出して尋ねた。

「……なっちゃん、何お願いされてたの?」

「ん?」

 振り返った彼は、何秒間か私をじっと見ていた後、視線を逸らした。

「……秘密」

「えー、なにそれ!」

 教えてくれないなんて、余計に気になるじゃないか。
 一体なんだろう。

 私は首を傾げて、その背中を見つめた。


 やがて、帰りのホームルームの時間が始まった。
 テストも終わり落ち着いたということで、いよいよ初めての席替えが行われた。

 くじ引きの結果、私が引いたのは、真ん中あたりの列の前方という、なんとも微妙な位置だった。
 大好きな窓際の席は、今回はゲットできなかった。

 そして、なっちゃんが引いたのは、今と同じ廊下に面した列の、後方だった。
 私の視界に入らない位置になったため、授業中にふと顔を上げた時、あの広い背中を見ることができなくなってしまった。
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