幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。【完結】
 ◇

 ――キーンコーン、カーンコーン。

 四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、昼休みを迎えると、教室は一気に喧騒に包まれた。

「朝井ー、購買行くー?」

 リュックから財布を取り出そうとしていた葉山が、遠くから声をかけてくる。

「わり、今日用あるわ」

 立ち上がりながら答えると、葉山は「あ」と何かを思い出したようにニヤリとした。

「例のアレか。頑張れよー」

「おー」

 短く返し、そそくさと教室を後にした。


 向かった先は――特別教室棟の奥にある軽音部の部室。
 ノックをして重い鉄扉を開けると、狭い室内にはすでに僕以外のメンツが揃っていた。

「よー! 待ってたぞー!」

 先日、土下座する勢いで「あること」を頼み込んできた嶋が、パッと顔を輝かせて出迎えてくれた。
 こいつとは、小学校から一緒だ。

 あとは、高校からの外部入学で面識のない男子が二人。
 初対面のため軽く挨拶をしたあと、部屋の隅にある年季の入った古いソファに腰を下ろした。

 目の前のテーブルには、丸まった楽譜やらギターのピックやらが無造作に散らばっている。

 嶋以外のメンバー二人からも、「OKしてくれて、ホントありがとな!」「マジで助かった!」と感謝される。

「いやいや。でも……本当に俺でいいの?」

 念のため確認するように尋ねると、三人は力強く頷いた。


 事の始まりは――テスト返却日の、あの休み時間。

 文化祭でバンドを組んでステージに立ちたいと考えていた彼らは、ボーカルだけが見つけられず困っていたらしい。
 そこで嶋が、昔一緒にカラオケに行った僕のことを思い出し、白羽の矢を立てたのだ。

 自分で言うのもなんだが、歌はわりと得意だった。
 中学の頃、部活の打ち上げなどでカラオケに行くたび、「お前……なんでそんなに上手いんだよ!?」と驚かれていたほどだ。

 とはいえ、カラオケの密室と、たくさんの生徒が集まる文化祭のステージとでは、訳が違う。
 大人数の前で歌った経験など当然ないため、最初は断るつもりだった。

 けれど、嶋が教室で必死にお願いしてきた時。
 真後ろにいるめぐみの存在にハッとした。

(ステージで歌うところを観てくれたら……俺への好感度が、少しは上がるだろうか)

 そんな、不純でどうしようもない期待が頭をよぎり、最後の一歩を後押しされてしまったのだ。
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