幼馴染への三度目の失恋を回避したい ――激重な片思いを隠さなくなってきた彼に、心臓がもたなくなってきた彼女。

第29話

 いよいよ次が、僕たちの出番だ。
 一つ前のバンドの演奏を、舞台袖で聴いていた。

 文化祭における軽音部のライブイベントは、やはり相当な人気コンテンツらしい。
 袖の暗がりの隙間からこっそり覗き込むと、色んな学年の観客がステージの周りをびっしりと囲んでいるのが見えた。

「やばっ! 俺、緊張してきたかも……」

 ベースを担当する男子が、小さな声で呟く。

「……俺も」

 思わず、本音を漏らしてしまった。

 今まで経験してきたバスケの試合などとは、まったく種類の違う緊張感だ。
 こんなにたくさんの人間が、自分たちの出す「音」を聴き入るために集まっている。

 ましてやステージ上で歌うなんて、僕にとっては初めての体験だ。
 実際にあの光の当たる場所に立つまで、自分がどうなるのか想像もつかない。

 ふと振り返ると、由利さんは一人、平然としていた。
 鍵盤の位置を確認するような素振りすらなく、暗譜しているらしく手元に楽譜も持っていない。

「……由利さんは余裕そうだな」

 声をかけると、静かにこちらを見て、「慣れてるから」と短く返してきた。
 その落ち着きぶりに少しだけ救われた気持ちになった。

 僕は再度、ステージ下の観客席へと目を凝らした。

(……いた)

 めぐみだ。

 薄暗い体育館の中、昨日お願いした通り、ステージの正面の真ん中のほうに立ってくれている。

 白い半袖のワイシャツに、薄ピンクのリボン。
 いつもの制服姿が、照明の光を反射して目立っていた。

(……緊張するけど、すげー嬉しい)

 胸の奥が熱くなった。
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