超能力持ち令嬢ですが冷徹理屈屋公爵に「その力を貸してくれ」と言われて偽装結婚することになりました

第16話 未然の贋作作家②

その日、ミラン・ヒースは描きあげた絵をいつものようにギャラリー・モリスに委託し、帰路を歩いていた。

このギャラリーは上流階級専門の高級店街の一角にあるため、ミランはいつも裏通りを利用している。
平民出身の画家ミランの住居兼アトリエは、ここから少し遠くにあるので、行く時は絵を搬入するため乗合荷馬車を使い、帰りは徒歩だ。

王族や貴族に召し抱えられたり、定期的に貴族に絵を教える仕事が入れば安定した生活が送れるのだが、ミランは内向的で口下手のため、なかなかお呼びがかからなかった。

(このまま貯金が尽きたら……)

以前、パブで隣り合った男に画家だと話したら、贋作を描かないかと持ちかけられたことがある。
贋作を描くのは犯罪だ。
しかし生活が苦しくなると、その時に提示された破格の報酬額が脳裏によぎってしまう。


「おーい、ミラン君! ああよかった、間に合って!」
「あ、モリスさん……」

ミランが振り返ると、先ほど訪れたギャラリーの主が手を振りながら駆け寄って来た。

(も、もしかして絵に何か不備があった!?)

びくびくするミランにモリスは満面の笑みを向ける。

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