冷徹社長の一途な痴情 ― 辞めるなら最後に俺を選べ―

1章 この恋は終わるはずだった

私は、霧島社長の秘書として、完璧であることを求められている。

会議資料は一つの誤差も許されない。

数字の並び、グラフの配置、ページをめくる流れまで、すべて社長の思考に合わせて整える。

それができて初めて、“使える資料”になる。

コーヒーも同じだ。

深すぎず軽すぎない苦味、集中を邪魔しない温度――細部まで気を配るのが、私の役目。

「社長、珈琲をお持ちしました」

デスクにそっと置くと、ほろ苦い香りが静かに広がる。

「会議資料も、この通りです」

差し出したファイルに、社長は視線を落とした。

数秒後、ページをめくる音だけが部屋に響く。やがて、ふっと小さく笑った。

「君には負けるよ。何もかも完璧だ」

その一言に、胸がわずかに揺れる。

けれど私は表情を崩さず、いつものように微笑んだ。
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