冷徹社長の一途な痴情 ― 辞めるなら最後に俺を選べ―
「ありがとうございます」

それ以上は何も言わない。言葉にすれば、何かが零れてしまいそうだから。

霧島裕哉という人は、徹底して冷徹だ。

無駄を嫌い、結果だけを求める。

部下に対しても容赦はなく、曖昧な報告や甘い見通しは一瞬で切り捨てられる。

社内で彼を恐れていない人間はいないだろう。

それでも――私は、その傍にいる。

会議室での彼は、まるで別人のようだ。

鋭い指摘が次々と飛び、誰も反論できない空気を作り上げる。

私はその隣で、次に必要になる資料を先回りして差し出す。

彼が一瞬視線を動かすだけで、求めているものがわかる。

それができるのは、きっと私だけだ。

会議が終わり、人がいなくなったあと。

ふっと息をついた社長が、ネクタイをわずかに緩める。
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