冷徹社長の一途な痴情 ― 辞めるなら最後に俺を選べ―
「……助かった」

ぽつりと落とされたその一言に、思わず顔を上げる。

誰もいない場所でだけ見せる、ほんの少しの緩み。

冷徹な仮面の奥にある、わずかな人間らしさ。

「いえ、秘書として当然のことです」

そう答えながらも、胸の奥がじんわりと熱を持つ。

どうしてこんな一言で、こんなにも揺れてしまうのだろう。

私はただの秘書で、彼は社長。

それ以上でも、それ以下でもないはずなのに。

――それでも。

ほんの少しだけ見せられる優しさに、私は抗えない。

そして社内に広がる噂は、いつも決まって唐突に耳に入る。

「霧島社長、この前のパーティーで綺麗な女性と一緒だったらしいですよ」

何気ない雑談のように聞こえてきたその言葉に、手元の書類をめくる指が一瞬止まった。

――そういうこと、だよね。
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