生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
 光輝の目には、理彩子がよほどいつもとは違って見えているようだ。大丈夫だと何度も言ったのだが、彼は聞く耳を持ってくれない。
 すぐさま先方に電話をかけるとサクッと断りを入れてしまった。

 あぜんとする理彩子を横目で見て、彼は有無を言わさないといった表情を浮かべる。

「ただの商談に変更しました」
「ふーじーいーえーさん!」

 異議あり!と不服顔で言ったのだが、それを彼は華麗にスルーした。
 その代わり満面の笑みを向けてくる。

 なんだか無性に寂しくなって、鼻の奥がツンとした。

(ダメだ。なんだか私、感傷的になっているかも……?)

 これからも光輝とともに仕事に励みたい。もっともっと会社を大きくしていきたかった。
 今後も光輝と二人三脚で仕事をし続けられたら、どんなに楽しいか。

 しかし、それは理彩子のわがままだ。
 仕事がデキる彼だからこそ、もっとできる人のそばにいるべきだ。

 なんでもできる香梨奈ならば、光輝がずっと支え続けたいと思えるような社長になれるはず。

(私も、藤家さんにそう思ってもらいたかったな……)

 理彩子では光輝を満足させられるような社長にはなれない。だからこそ、ここらあたりが引き際なのだ。
 あと少しすれば、香梨奈が帰国する。

 
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