生真面目秘書だった彼がハイスペ副社長になって滾る執愛を刻み込んできます
 彼の目は理彩子を観察し、どこか不審な点はないかと見極めているようにも見える。
 どうしたの、と声をかけようとすると、光輝の眉間には深い皺が刻まれた。

「社長、お疲れですか?」
「え?」
「なんだか今生の別れみたいなことを言いだしたので」
「今生の別れって」

 苦く笑いながらも、光輝の勘の鋭さに舌を巻く。
 それでも隠し通すつもりだ。社長でいられる、最後の最後までは今まで通りでいたい。

「私は、まだまだ働くわよ」

 ニッと口角を上げて笑うと、光輝は小さく息を吐き出す。

「やはりお疲れのようです。後で社長のお好きな和菓子を買ってきます」
「本当?」

 寂しさを隠すようにいつも以上に喜ぶと、光輝は困ったように眉尻を下げる。

「やはり仕事量をセーブしましょう」
「え?」
「先ほどお伝えしたランチミーティング、あれは中止にします」
「ちょ、ちょっと! 大丈夫だって」

 まさかそんなに心配するとは思わず慌てる。

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