これは私が望んだ復讐です
5話 対象的な二人
「あぁん。オーエン様……!」
「ああ……! シャルロット! すごく気持ちがいいよ……」
――こっちは、気持ちが悪いのですけど。
自分の婚約者が他の女性と浮気している声もそうだけど、身内である妹の嬌声も聞きたくはない。しかし二人はかなり体の関係が進んでいたようだ。
――もしかして子を作って、強引に結婚するつもりなのかしら?
隣にいるシモン様も同意見だったようだ。小さく「これは止めたほうがいいだろう」と言って、ドンドンドンと激しく扉をノックした。中からはシャルロットの叫び声と、殿下の驚く声が聞こえてくる。
きっと誰かが来てもごまかせるように、寝室にまでは入れていないのだろう。しかし中途半端に手前の部屋で始めたために、二人の声は丸聞こえだった。
「だ、誰だ! 人払いはしたはずだ! あっちへ行け!」
「私です。カリエントのシモンです」
「えっ! シモン殿下!」
カリエント国は我が国よりも大国だ。さすがにオーエン様もシモン様の訪問を、ないがしろにできないと判断したらしい。扉の奥でドタバタと騒がしい音がした後、殿下がそろそろと顔を出した。
「シモン殿下、いったいこんなところまで、どうしたのですか?」
乱れた髪に、作り笑顔。しかしそんな表情もシモン様の隣に立つ私を見て一変した。
「なんだ、スカーレット! もしかしておまえがシモン様をここにお連れしたのか? なぜ別の部屋でもてなさない? 本当におまえは口ばかりで無作法な――」
「いいえ、私がスカーレット様に強引にここに連れてきてもらったのです。いち早くあなたの許可が欲しくて」
「はっ? え? 私の許可ですか?」
シモン様に否定されるとは思わなかったのだろう。オーエン様はキョロキョロと私とシモン様を見比べては不思議そうな顔をしている。
「ええ。スカーレット様はあなたの婚約者ですよね。ならばダンスを申し込むのに、あなたの許可が必要だと思って、ここに来たのですが……。お邪魔してしまったようですね」
にっこりと微笑むシモン様は、先ほど私に見せていた少年っぽさが消えていた。優雅で上品。それでいて堂々とした男らしさ。年はさほど変わらないはずなのに、目の前のオーエン様と比べると大人の魅力にあふれていた。
「あ……いえ、あの、スカーレットはもう……」
「おや、そうですか。では、私が彼女をダンスに誘って今夜のパートナーにすることをお許しくださいますか?」
「は、はあ……」
シモン様の登場に頭が冷えたのかもしれない。もしくはさっきの宰相様の言葉が、今頃頭に浮かんだのか。いずれにせよオーエン様の言葉は歯切れが悪く、おどおどとしている。
「そうですか! ならばスカーレット様、今宵はあなたを独り占めさせてください」
少し芝居がかっているけど、きっとオーエン様は気づかないだろう。私は差し出された手に自分の手を重ねると、再びパーティー会場に戻ろうとした。その時だった。
「お待ちくださいませ! シモン様!」
強引に私とシモン様の間に割って入ってきた女性。それはやはり、妹のシャルロットだった。