これは私が望んだ復讐です

7話 私の幸せをはばむ二人

 
「無礼者! 手を離せ! 私がカリエントの王族と知ってなお、その態度はなんなのだ!」
「きゃあ!」


 突然のシモン様の叱責に、シャルロットは腰を抜かし床に座り込む。彼女にとってこんな怒られ方は生まれて初めてだ。父親からも甘やかされてきたのだ。わけがわからないと言った様子でカタカタと震えている。


「シモン様、私の妹が申し訳ございません」


 私は妹とシモン様の間に入り、頭を下げ謝罪する。


 もっと早くに妹を止めるべきだった。何かの作戦だろうかと見守ってしまった自分が恥ずかしい。しかしシモン様は頭を下げる私の手を取り、自分の胸に引き寄せた。


「すまない。大きな声を出したので驚かせてしまったね。スカーレット様、許してくれるだろうか?」
「えっ……? そ、それはもちろんです。許すもなにもないですわ」


 ――いったいこれは? 作戦よね?


 今の私はふんわりと包みこまれるように、シモン様に抱きしめられている。よくわからないけど、突き飛ばすわけにもいかない。許すと伝え、されるがままでいると、彼はにっこり笑って体を離した。


「では、スカーレット様。行きましょう」


 シモン様が再び私をエスコートしようと手を差し出した。すると今度は、黙って見ていたオーエン様が声を荒げた。


「待ってください! まだスカーレットは私の婚約者です。勝手に連れ出されては困ります」


 悔し紛れの言葉なのだろうか。あまりにも身勝手なその言葉に、私は呆れ返ってオーエン様を見つめる。


「そうだろう? スカーレット」
「それはそうですが……」


 ニヤリと笑うオーエン様は、ただ私がシモン様に救われるのが嫌なだけだ。そう考えるとシャルロットとオーエン様は似た二人なのだろう。二人とも私の幸せよりも、自分なのだ。


 ――どうしたらいいかしら。ここでオーエン様の言葉に従えば婚約破棄はなかったことになりそうだけど、でもそこまでして王妃になりたいわけじゃない。かといって、王妃でもないのに聖女としてこき使われ、妹に頭を下げて生きるのも嫌だわ……


 そんな押し黙った私に救いの手を差し出してくれたのは、またしてもシモン様だった。


「オーエン様、しかしあなたは先ほど彼女に婚約破棄を伝えたのでしょう。それにあなた達の睦言の声が廊下にまで聞こえていましたよ。それでよくスカーレット様を婚約者だと言えますね」


 さっきまでの出来事をずばりと言われ、オーエン様はタジタジになっている。


「う……! そ、それは……! しかし彼女とは最後までは……」
「ほう。それでは一人の未婚の女性と淫らなことをしたのは認めるのですね」
「あ、いや、そういうわけでは……」


 ――本当に気持ち悪い。


 シモン様の問いかけにオロオロするばかりで、しまいにはオーエン様は黙ってしまった。いっぽうシャルロットは普段隠している私への憎しみを隠そうともせず、睨み始めている。そして信じられないことを口にした。


「実はわたくし、オーエン様の子を身籠っているかもしれませんの」
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