【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
チン、と音がして、九階に着く。
扉が開いて、先輩が先に一歩踏み出した。
「……今日、朝から暑いですよね。もう完全に夏ですね」
廊下を並んで歩きながら、わざと明るい声で話題を変えた。エレベーターの中よりも、少しだけ呼吸がしやすい。
「……そうだな。……俺はどちらかと言えば、冬の方が好きだが」
「あ、そうなんですか! 意外です、なんか先輩ってクールで涼しい感じがするので、夏っぽいイメージありました」
「……夏っぽい?」
先輩が、今日初めてこちらを向いた。
少しだけ訝しげな、でもどこか穏やかな目。
「あ、えっと……うまく言えないんですけど……!」
「……まあ、悪い気はしない」
それだけ言って、先輩はまた正面を向いた。
その口角が、ほんの一瞬、優しく動いたのを私は見逃さなかった。
扉が開いて、先輩が先に一歩踏み出した。
「……今日、朝から暑いですよね。もう完全に夏ですね」
廊下を並んで歩きながら、わざと明るい声で話題を変えた。エレベーターの中よりも、少しだけ呼吸がしやすい。
「……そうだな。……俺はどちらかと言えば、冬の方が好きだが」
「あ、そうなんですか! 意外です、なんか先輩ってクールで涼しい感じがするので、夏っぽいイメージありました」
「……夏っぽい?」
先輩が、今日初めてこちらを向いた。
少しだけ訝しげな、でもどこか穏やかな目。
「あ、えっと……うまく言えないんですけど……!」
「……まあ、悪い気はしない」
それだけ言って、先輩はまた正面を向いた。
その口角が、ほんの一瞬、優しく動いたのを私は見逃さなかった。