契約恋人のはずでしたが社長に溺愛されて離してもらえません
「今日はこれで終わりだ」

定時を少し過ぎた頃、デスク越しにそう告げられた。

「はい。本日の予定はすべて完了しています」

私はタブレットを閉じながら答える。

「では、失礼——」

席を立とうとした瞬間。

「待て」

低い声に足が止まる。

「送る」

「……結構です」

反射的に返してしまった。

「自分で帰れますので」

「そういう話じゃない」

きっぱりと言い切られる。

「契約中は、可能な限り一緒に行動する」

「ですが、ここは社内ですし——」

「だからこそだ」

視線が真っ直ぐに向けられる。

「誰が見ているかわからない」

「……そう、ですね」

理屈は理解できる。

けれど、それでも。

「行くぞ」

それ以上の反論は許さない、と言うように立ち上がる。
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