死神の鳥籠〜激重感情に囲われまして〜
外を見つめる私の頬に、視線が刺さる。
向かい側の席からじっとこちらを見つめているのは、もちろん、深月だ。
街から今度は目の前へと視線を移すと、やはり深月はいつも通り、優しい笑みを浮かべ、こちらをまっすぐ見つめていた。
深月は私とは違い、和装よりも洋装を好み、普段着も白いシャツやスーツであることが多い。
その為、今の黒の学ラン姿は、いつもの色違いといった印象で、あまり物珍しさはなかった。
「なぁに、結?」
私の視線に気づいた深月が、ふふ、と柔らかく笑う。
絶世の美青年。
その言葉が似合ってしまうのが深月だ。
サラサラの濃い青髪は無造作にセットされ、どこか寝起きの時とは違う大人っぽさを漂わせている。
その髪から覗く瞳は血のように濃い赤で、一度見たら忘れられないだろう。
程よい筋肉と誰よりも高い身長。
その上、手足も長く、何もかもが完璧だ。
「別にぃ。私の幼馴染は相変わらず綺麗だな、て」
冗談っぽく思ったことを口にすれば、深月は愉快そうにその瞳を細めた。
「綺麗…か。嬉しいな。けど、結の美しさには敵わないよ」
深月が私を上から下まで絡めとるように見つめる。
「結の漆黒の黒髪はまるで絹のようだし、小さな頭は何よりも愛らしい。そして、その瞳。俺と同じ赤い瞳は誰も忘れられないほど魅力的だ。この世に女神がいるのなら、きっと結のような見た目をしているんだろうね」
「…本気で言ってる?」
「本気だよ、わかっているくせに」
「…」
深月の歯の浮くような言葉に、思わず言葉を失ってしまう。
冗談のように、けれど、本気で深月はこんなこと言う。
もう90年も一緒にいるので、慣れてしまった。
呆れたように深月に視線を向けていると、馬車はゆっくりと止まった。
どうやら、学院へ着いたようだ。


