黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
第一章 僕が、あなたの彼氏になりましょうか
眼下に広がる地上の星を眺めながら、憂鬱なため息をつく。

……やっぱり、来なきゃよかった。

しかし、後悔したってもう遅い。
視線を戻した室内では、上品そうな男女が楽しそうに話していた。
あの中に私も入ればいいのだろうが、そんな気にはなれない。

「このあいだ、車を買ったんだ。
ほら、大きなレースで何度も優勝してるヤツ」

すぐ近くのテーブルから若い男の声が聞こえ、視線を向ける。

「まあでも、そのままじゃ街は走れないから、性能は落としてあるんだけどね」

謙遜してみせながらも、彼の顔は得意げになっていた。

「えー、それでも凄いよ!
だってレースに出てるのと同じ車なんでしょ?」

「まあね」

隣に座る女性が無邪気に褒めるが、完全に芝居がかっていた。
しかし男は気づかず、喜んでいる。
そこかしこで、同じような会話が繰り広げられていた。

「……もう、帰りたい」

無意識に自分の口から出た言葉に気づき、慌てて周囲を見渡す。
幸い、誰も気づいていないようだ。
同僚に連れてこられたセレブパーティだが、私には場違いだった。

「でも、素敵な彼氏作って見返してやるんだし」

< 1 / 61 >

この作品をシェア

pagetop