黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
本当は素敵な理由があるのだが、それをこの男に話す気はない。

「なんか夏初ちゃんって、こういうところにくる子とは雰囲気、違うね」

「そうですか?」

話を切り上げて立ち上がるタイミングを探す。
けれど男はなかなか話をやめてくれない。

「そう。
男を漁ってあわよくば結婚、って女ばかりなのにさ。
夏初ちゃんはそんなにおいがしないっていうか」

「ひっ!」

顔を近づけうなじのにおいを嗅がれ、反射的に心臓が跳ねるのと同時に小さく悲鳴が漏れた。

「そういう反応も、新鮮」

けれど彼はなにがおかしいのかにやにやと笑っている。

「なあ。
ふたりで飲み直さないか」

彼の手が髪を払うように私の頬に触れ、爪先から頭のてっぺんまで鳥肌が一気に駆け上がってきたが、叫び出しそうになるのをどうにか堪えた。

きっとこのあとには〝ホテルで〟か〝オレの部屋で〟がつくのだろう。

もう不快感と身の危険しか感じなくて、必死にこの場を離れる口実を考える。

「あ」

なにか気づいたフリをしてバッグを漁る。
取り出した携帯の画面を確認し、深刻そうに眉を顰めてみせた。

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