黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
第五章 夏初は僕だけを信じていたらいい
横領容疑をかけられて会社を辞め、晴貴さんのマンションに来て二日目。

「僕は仕事に行くけど、なにかあったら絶対に連絡して」

いつものようにパン屋で朝食を済ませ、出勤する晴貴さんは真剣な顔で私に言い含めてきた。

「はい、わかりました」

心配性な彼がおかしくて、少し笑ってしまう。
けれどそこまで思ってくれるのは嬉しくもあった。

「絶対に連絡するんだぞ」

同じことを繰り返して去っていく彼を、手を振って見送る。

「絶対だからな」

「はいはい、大丈夫ですから!」

数歩行っては彼が振り返り、笑い転げていた。

一度、マンションへ戻ってスーパーなどの場所を確認する。

「調理道具は一回、街に出たほうが正解かな」

昨日の夜、晴貴さんは私に当面の生活費と調理道具代だとお金をくれた。
今、現金がこれだけしかなくてと申し訳なさそうだったが、キャッシュレスが多い最近では多額の現金を持ち歩いているほうが珍しい。

いるものをメモしていたら、携帯が着信を告げた。

「え……」

相手は会社になっていて、固まった。
どうしようか悩んでいるあいだにも着信音は鳴り続ける。
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