黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
書類チェックをしてくれていた斉藤さんに呼ばれ、席を立つ。

「これ。
中身が逆になってた」

「え……」

机の上に並べられた封筒を見てあっという間に血の気が引いていく。

「普通の会社でも間違えちゃいけないけど。
特にうちは個人情報やお客様のプライバシーに関わることなど繊細な情報を取り扱ってるから、絶対に誤送付なんてあってはいけないわ」

「……はい」

深刻な顔で言われ、すっかり萎縮してしまう。
ちょっと確認すれば済む問題だったのに、集中力を欠いてこんなミスをしてしまった自分が嫌になる。
入れ間違いなど些細に見えて、信用に関わる深刻なミスだ。

「今はまだ、私がダブルチェックしているからここで止められた。
でもこの先、ひとりで仕事をするようになったらそうはいかない。
気をつけてちょうだい」

「はい」

斉藤さんの厳しい指導が身に染みて、自然と背筋が伸びていた。
彼女の言うとおり今は駆け出し秘書だからチェックが入っているが、指導を離れて本格的に仕事をしだしたらそうはいかない。
気を引き締めていかなければ。

席に戻り、気持ちを入れ直すように小さく深呼吸して仕事を再開する。
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