黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
私の声を聞きつけ、すぐにどたばたと荒々しく複数の靴音が近づいてきた。

「お、おい!
この女、どうにかしろ!」

憲吾先生が乱雑にドアを開け、やってきた人たちに助けを求める。
そこでようやく、私は口を離した。

「……これはどういうことですか」

代表するように前に出た、晴貴さんの声は恐ろしく低い。

「どういうこともこういうことも、この女がいきなり噛みついてきたんだよっ!」

怒鳴りながらも後ろめたいところがあるからか、憲吾先生の視線は泳いでいた。

「憲吾先生からここに連れ込まれ、大声出したら口を塞がれたので噛みつきました」

私は晴貴さんを真っ直ぐに見て、淡々と事実を告げる。

「僕は夜桜さんの言うことを信じますが、憲吾先生の言い分が正しいとしてもどうして会議室でふたりきりに?
夜桜さんとの接触禁止が所長から命じられていたはずですし、勧告も送ったはずですが」

「そ、それは」

痛いところを突かれ、憲吾先生はしどろもどろになってきた。

「ご説明いただけますか」

一段、強い声で晴貴さんが憲吾先生を問い詰める。
他の人も彼が逃げられないように取り囲んだ。

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