黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
居づらいのは憲吾先生のほうでは?と喉まで出かかったが、かろうじて飲み込んだ。
下手に刺激して激高されても困る。

「この件については代理である陽川先生を通してください。
私からは憲吾先生とお話しすることはありません」

話は終わったと部屋を出ていこうとしたが、彼が私の前に立ち塞がる。

「オレは、オマエと直接話をしているの」

愉悦を含んで彼の目がイヤラシくにたりと歪む。
弱者をいたぶるのに興奮しているその顔に、危険を感じてぶるりと身体が震えた。

「大声、出しますよ」

それでも毅然として言い返す。

「関係ない」

しかしすぐに鍵のかかるカチリと乾いた音がして、私を絶望へと突き落とした。
いや、絶望などしている場合ではない。
大きく息を吸い込み、腹に力を入れる。

「誰かー!」

「おい、黙れ!」

予告してあったというのに私が大声を出すと、憲吾先生は慌てて私の口を塞いできた。
その手に思いっきり、歯を立ててやる。

「いってーっ!
やめろっ!
離せっ!」

憲吾先生が暴れるが、がっちりと深く噛みついてやった。
おかげで口の中に、鉄の味が広がってくる。
< 193 / 253 >

この作品をシェア

pagetop