黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「ありがとうございます」

ここまで配慮してくれるのならもう十分だ。
この事務所に就職してよかったと思えた。

「陽川先生」

「はい」

所長に呼ばれ、晴貴さんが姿勢を正す。

「手加減は必要ありません。
弁護士として相応の責任を取らせてください。
結果、弁護士を続けられなくなってもかまいません。
むしろ、そのほうが息子にとっては幸せなのかもしれません」

泣き出しそうに所長が笑い、胸が苦しくなった。
なんだかんだ言いながらも問題のある憲吾先生を、事務所を分けてでも弁護士を続けさせようとした。
けれどそんな所長の気持ちを、憲吾先生は潰したんだ。

「わかりました」

重々しく晴貴さんが頷く。
憲吾先生はとうとう取り返しのつかないことをしたのだと、自覚はあるのだろうか。

「夜桜さん、疲れたでしょう?
今日はもう、帰っていただいてかまいませんよ。
陽川先生も予定は調整できているのでしょう?
でしたら傍にいてあげてください」

「あ、ありがとうございます」

所長からにっこりと微笑みかけられ、晴貴さんが気まずそうに目を逸らす。
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