黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
「僕は母を守れなかったことを後悔している」

「でも、それは晴貴さんが小さかったからで、仕方がないです」

中学のときに母親が再婚したと言っていた。
別れたのはたぶん、晴貴さんが小学生のときだ。
そんな子供が大人の男に敵うわけがない。

「うん、わかってる。
それでも母が殴られているのを見ているしかできない自分が嫌だった。
少しでも強くなりたくて弁護士になったんだ」

彼が弁護士になった理由を初めて知った。
正義感が強いからだと思っていたが、母親を守れなかった後悔からだったんだ。

「そういう事情があって、大事な人を傷つける人間が許せない」

ぽつりと呟いた声は酷く苦しそうで、私の胸まで痛くなる。
彼が私を傷つける人間に過剰に反応しすぎると気になっていた。
しかし、わけを聞いてしまうと簡単にやめてくれという問題ではなく、どうしていいのかわからなくなってしまう。

それにそこまで私は彼に大事に想われているのだと、胸の奥が熱を持つ。

「……と、いうのは建前かな」

「建前、ですか」

軽く言って彼が寝返りを打ち、深刻な空気がなくなった。

「うん」

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