黒弁護士は夜咲く桜を独占する~過保護な愛に溶かされて~
なんだかおかしくてふふっと小さく笑いが漏れる。
別に苦手というわけでもないが、なんとなく縁がなかった。

「え、そうなんですか」

さも意外そうに陽川さんが私の顔を見る。
もしかしたら鳥越くんが指環を買ってくれたのではと思っていたのかもしれないが、そんなものもらったことがない。

「じゃあ、僕が初めて買った指環が、夏初さんの指を初めて飾るんだ」

「え?」

今度は私が、彼の顔を見上げていた。
陽川さんなら今まで何人かと付き合っていてもおかしくない。

「僕のものって印をつけておきたいと思ったのは、夏初さんが初めてです」

照れくさそうに彼が、人差し指で頬を掻く。

「うっ」

椅子に座っているから今度は崩れ落ちるのには耐えたが、陽川さんは無自覚なのかちょいちょいこういう可愛い顔を見せてきて困る。
いや、三十歳男性に可愛いは失礼か。
……でも。

熱い顔でお茶を啜りながら彼をちらり。

……不思議な人だよね。

私の前ではどこからどう見ても人懐っこい大きな犬だが、出会ったときに私から鹿野谷さんを引き離そうとしたときや鳥越くんと対峙したときは恐ろしく冷たい顔だった。

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