黒魔術の使い手ですが何か?! 死に戻り王太子妃は今世ではもふもふ精霊と一緒に楽しく暮らしたい
「お義母様。明日お兄様と出かけたいのですけれどよろしいですか?」

静けさを遮るように言うと、シーヴァがほっとしたように声を出した。

「どうしたんだ?オーロラ。どこかに買い物でも?」

「いいえ、ヒズルのお屋敷に行きたいのです」

「何だって?」

兄の声とともに、父がむせるのが見えた。

「オーロラ、お前何を!」

エンジェルが前世でしきりに言っているのを思い出したのだ。病気だった母を追い出してあの義母はさらに刺客をやって殺したと。
それが本当なら今エンジェルの母は病に倒れているはずだ。

「お父様がお義母様にきちんと説明なさらないからです。わたしが行って確かめてきます」

「何を言って!」

今夕食の席にいる自分以外の四名は全員息をのんだ。
父に反抗するのは怖かったし、もしかしたらこれのせいで罰せられることになるかもしれないが、これから先全員がうまく過ごすためにはこれしかない。

「お父様が朝にされた説明だけではお義母様はじめ家族全員何も意味がわかりません」

義母とシーヴァは目を見張るようにオーロラを見ている。

「そ、それはだな」

「『ディナーをひとり多めに作らせよ。娘を連れ帰る』その言葉ですべてを理解せよと?」

「……」

父は無言になり眉尻をあげた。
父を纏うオーラに怒りを含んでいる。
やはりこのやり方はだめだったか。
だが、オーロラがここで罰せられたら母を迎えに行ってなんとか国を出る方法を考えよう。
そもそも自分が回帰した時点で出会う人皆を助けると決めた。
だからエンジェルの母も助けなければならないのだ。

「ですから、エンジェルという新しい妹の母君に会いに行くのです」

「オーロラ!お前!」

シーヴァは驚きの声を上げた。
全員禁句だと思っていたエンジェルの母親の話。それをあえて夕食の席でしたオーロラに驚愕しているようだ。

だが、ぼそっと義母がつぶやいた。

「オーロラが会いに行ってくれるのはわたくしも賛成よ」

「母上!」

「ねぇ、あなた。わたくしこのままでは何をしてしまうかわかりませんわ。オーロラに任せるのなら目を瞑りましょう」

「エミリア……」

義母の怒気を含んだ声を初めて聴いた。
父もそうだったに違いない。
震えあがるようなその声に父は頷くしかなかったようだ。

「そうか。ならばオーロラに任せよう。シーヴァ、オーロラを頼む」

「わかりました」

父の怒りはそこまでは沸騰しなかったようだ。

オーロラは明日ジーヴァとともにエンジェルの母親に会うことになった。
エンジェルがどういう表情で横に座っていたのかは知らない。
ただ、オーロラはエンジェルのことを考える気はなかった。
前世での所業を忘れることはできない。
< 34 / 78 >

この作品をシェア

pagetop