【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻
集中治療室の前で、看護師が注意事項を説明する。
消毒。マスク。面会時間。刺激しないこと。

ガラス越しに見えた怜央は、あまりにも静かだった。
ベッドの上で、機械に繋がれて、規則正しい音に囲まれている。
胸が、ぎゅっと締まる。

「……怜央」

夫人がそっと名前を呼んだ。
その瞬間、怜央の瞼が、微かに動いた。

「……!」

誰かが息を呑む。
次の瞬間、彼の目が開いた。
焦点が合わないまま、ゆっくりと視線が動き——そして、私のところで止まった。
真正面から、まっすぐに。
まるで、私だけがこの部屋の中で確かなものだと言うみたいに。

「……君は……」

怜央の声は掠れていた。けれど、その言葉は驚くほどはっきりしていた。

「俺の……妻だろ?」
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