【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻
待合に戻ると、医師が家族へ状況説明を始めた。
「……事故の衝撃による外傷性健忘の可能性があります。確かめたところ、事故にあったことを含めて、記憶をかなり喪失しているようです。今は刺激を避け、本人が安心できる環境を整える必要があるでしょう」
「記憶喪失……?」
夫人の声が揺れる。
「記憶が完全に戻るかどうかは個人差があります。焦らずに。ですが、今の状態で否定や強い訂正をすると、混乱や興奮を招くことがあります」
医師の言葉の意味が、遅れて胸に落ちてくる。
――私が、妻じゃないって否定したら……怜央さんが不安定になる?
そんなの、無理だ。
でも、私が嘘をつくのも——。
私は、何者でもないのに。
「……事故の衝撃による外傷性健忘の可能性があります。確かめたところ、事故にあったことを含めて、記憶をかなり喪失しているようです。今は刺激を避け、本人が安心できる環境を整える必要があるでしょう」
「記憶喪失……?」
夫人の声が揺れる。
「記憶が完全に戻るかどうかは個人差があります。焦らずに。ですが、今の状態で否定や強い訂正をすると、混乱や興奮を招くことがあります」
医師の言葉の意味が、遅れて胸に落ちてくる。
――私が、妻じゃないって否定したら……怜央さんが不安定になる?
そんなの、無理だ。
でも、私が嘘をつくのも——。
私は、何者でもないのに。