【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻
《怜央視点》
自分がこの病院の医者で、久遠家の人間で、守るべきものが多いことの説明は受けた。
けれど、それらはどこか紙の上の情報みたいで、胸の奥まで熱を持って落ちてこない。
でも、梨音だけが違う。
彼女が病室に入ってきたとき、張りついていた痛みが少し遠のいた。
強がっているくせに、すぐ顔に出る。困ると目が泳ぐ。怒ると声が少しだけ高くなる。
見ていると、触れたくなる。
安心させたくなる。
離したくないと思う。
愛している、と口にしたのは理屈ではなく、たぶん本音だった。
妻だから、だけではない。
記憶がなくても、この先の空白を彼女なしで歩くのは嫌だと、妙に本能が知っている。
自分がこの病院の医者で、久遠家の人間で、守るべきものが多いことの説明は受けた。
けれど、それらはどこか紙の上の情報みたいで、胸の奥まで熱を持って落ちてこない。
でも、梨音だけが違う。
彼女が病室に入ってきたとき、張りついていた痛みが少し遠のいた。
強がっているくせに、すぐ顔に出る。困ると目が泳ぐ。怒ると声が少しだけ高くなる。
見ていると、触れたくなる。
安心させたくなる。
離したくないと思う。
愛している、と口にしたのは理屈ではなく、たぶん本音だった。
妻だから、だけではない。
記憶がなくても、この先の空白を彼女なしで歩くのは嫌だと、妙に本能が知っている。