【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻
そして、私の熱も寝不足もようやく抜けた頃。
怜央にも、主治医から本格復帰の許可が出た。
事故以来、初めてのフルオペ。
カンファレンスで怜央が術式を組み直した、あの十歳の男の子の再手術だった。
当日の朝、私は自分が執刀するわけでもないのに、朝食の卵焼きの味がほとんどわからなかった。
向かいでは怜央がいつもと変わらない顔で白湯を飲んでいる。
完全に回復したと言われても、やっぱり心配になる。
「緊張してるのか」
見透かしたみたいに言われて、私は箸を止めた。
「してません」
「してる顔だ」
即答だった。
悔しいけれど、その通りだから言い返せない。
怜央は小さく息を吐いて、私の皿をちらりと見た。
「朝食は完食」
「子ども扱いしないでください」
「君は放っておくと食べないだろ」
「その信頼のなさ、そろそろ傷つくんですけど」
私は箸を置いて、怜央を見た。
「行ってらっしゃい。無理しないでください」
怜央は一瞬だけ目を細めた。
ほんのわずか、口元が緩む。
「行ってくる」
それから、付け足すみたいに低い声で言った。
「君も無理するな。昼はちゃんと食べて、眠くなったら休め」
手術へ向かう男の台詞がそれでいいのかと思う。
けれど、胸の奥がじんわり熱くなった。
怜央にも、主治医から本格復帰の許可が出た。
事故以来、初めてのフルオペ。
カンファレンスで怜央が術式を組み直した、あの十歳の男の子の再手術だった。
当日の朝、私は自分が執刀するわけでもないのに、朝食の卵焼きの味がほとんどわからなかった。
向かいでは怜央がいつもと変わらない顔で白湯を飲んでいる。
完全に回復したと言われても、やっぱり心配になる。
「緊張してるのか」
見透かしたみたいに言われて、私は箸を止めた。
「してません」
「してる顔だ」
即答だった。
悔しいけれど、その通りだから言い返せない。
怜央は小さく息を吐いて、私の皿をちらりと見た。
「朝食は完食」
「子ども扱いしないでください」
「君は放っておくと食べないだろ」
「その信頼のなさ、そろそろ傷つくんですけど」
私は箸を置いて、怜央を見た。
「行ってらっしゃい。無理しないでください」
怜央は一瞬だけ目を細めた。
ほんのわずか、口元が緩む。
「行ってくる」
それから、付け足すみたいに低い声で言った。
「君も無理するな。昼はちゃんと食べて、眠くなったら休め」
手術へ向かう男の台詞がそれでいいのかと思う。
けれど、胸の奥がじんわり熱くなった。