【改稿版】記憶を失くした御曹司と偽りの妻
手術が終わるまで、私はその場を動けなかった。
しばらくして扉が開き、怜央が出てくる。
マスクを外した顔には疲労が滲んでいたけれど、足取りはまっすぐだった。
その直後、待機していた患者家族に向き直る。
「手術は予定どおり終了しました」
低く、落ち着いた声。
危険だった場面も、これから必要な管理も、怜央は一つずつ隠さずに説明する。
大丈夫です、と安い慰めは言わない。
でも、家族が自分の足で立てる言葉だけをきちんと渡していく。
妻らしい女性が泣きながら頭を下げると、怜央はほんの少しだけ目をやわらげた。
「礼は、元気になってから本人に伝えてください」
その一言に、家族の顔が少しだけほどけた。
やっぱりすごい。
どうしようもなく、すごい人だ。
だから私は、助けたいと思った。
惹かれていった。
そしてたぶん、もう手遅れなくらい好きになっていた。
怜央がもう私にやさしく笑わないこと。
私の名前を、あの声で呼ばないこと。
それがこんなにも苦しいのだと知った瞬間、ようやく自分の気持ちに言い逃れができなくなった。
私は、どうしようもないくらい怜央に恋をしていた。
しばらくして扉が開き、怜央が出てくる。
マスクを外した顔には疲労が滲んでいたけれど、足取りはまっすぐだった。
その直後、待機していた患者家族に向き直る。
「手術は予定どおり終了しました」
低く、落ち着いた声。
危険だった場面も、これから必要な管理も、怜央は一つずつ隠さずに説明する。
大丈夫です、と安い慰めは言わない。
でも、家族が自分の足で立てる言葉だけをきちんと渡していく。
妻らしい女性が泣きながら頭を下げると、怜央はほんの少しだけ目をやわらげた。
「礼は、元気になってから本人に伝えてください」
その一言に、家族の顔が少しだけほどけた。
やっぱりすごい。
どうしようもなく、すごい人だ。
だから私は、助けたいと思った。
惹かれていった。
そしてたぶん、もう手遅れなくらい好きになっていた。
怜央がもう私にやさしく笑わないこと。
私の名前を、あの声で呼ばないこと。
それがこんなにも苦しいのだと知った瞬間、ようやく自分の気持ちに言い逃れができなくなった。
私は、どうしようもないくらい怜央に恋をしていた。