秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
一歩、踏み込まれる。もう、後ろには下がれない。

「逃げるな」

低く、鋭く。その言葉が、胸の奥に突き刺さる。

(逃げてるのは……私?)

分からなくなる。

何が正しくて、何が間違っているのか。

ただ――

「愛果」

名前を呼ばれる。

その声に、抗えない。

「俺は終わらせるつもりはない」

真っ直ぐな視線。揺るがない意志。

それが、はっきりと伝わってくる。

空気が張り詰める中で――

私はただ、その場から動けなくなっていた。

張り詰めた空気の中で、誰も動けなかった。

私も、玲華も――そして司も。

「……社長」

やっと声を出す。このままじゃ、だめだ。

何か言わなきゃ。そう思った瞬間。

「俺が結婚するのは、愛果だ」
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