秘書の誕生日、一夜のはずが社長に溺愛されています
「……はい」

小さく頷く。でも、それがどういう意味なのか。

まだ、完全には理解できていない。

「どうして、私なんですか」

思わず聞いていた。

自分でも、驚くくらい素直な疑問。

社長は一瞬だけ黙る。

それから、ゆっくりと口を開いた。

「最初に会ったときからだ」

「……え?」

思考が止まる。

「お前が面接に来た日」

淡々と語られる言葉。

「他の候補者と違っていた」

その一言に、胸が揺れる。

「何が……ですか」

「目だ。逃げない目をしていた」

思い出す。あの日のこと。

緊張して、それでも必死に前を向いていた自分。

「普通は、俺を前にすると怯えるか、媚びるかのどちらかだ」

社長の指が、私の頬に触れる。

「でもお前は違った」

静かな声。でも、その中に確かな熱がある。
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