星の見えない夜に、誰を救う。

CASE8 友情

松之原タワー 35階 博物館 21:34
 ポタポタ……
「俺と一緒にいてくれるのか……母さん……?」
『あなたがそこまで望むなら、ママはいつでも付き合うわ……たとえ、あなたの身が滅びても』
 ビルが崩壊するまで2時間26分。今日だけ記憶を維持することができるということは、ビルの崩壊と同時に記憶も失うことになる。もう時間がない……!
「俺が未来を見るたびに記憶を失うなら、せめて誰かの記憶に残り続けたい。母さん……一つ頼みがある……」
『なあに……?』
「稲田将佑……今日会ったばかりなんだけどさ、あいつのこと、忘れたくないんだ……」
『あの消防士の人ね?何かあなたにそっくりな気がするわ……』
 母のブレーキのおかげで記憶を維持できているが、やはり今の時点で覚えているのが曖昧な気がする。だが時間になってしまったら失ってしまうと考えると、こんなにも心が虚しくなってしまうのかと、我ながら非常に寂しいものだ。
 ゴゴゴゴォ……!
「……!」
『幸人……もう時間がないわ……!』
「わかっている……!」
 松之原タワーはほぼ全焼でビル自体がピサの斜塔のように傾いている。一瞬だけ見えてしまった最悪な未来。それはクリスマスの日にちを迎えた頃、松之原タワーは港南アイランドブリッジに倒れ、橋を破壊して海に崩落していく。だが彼には秘策があった。
「そういえばあのドローン……爆弾を搭載していた……」
 ドローンをうまく使えば橋への崩落を防げるかもしれない。
「あと40パーか……」
 彼のスマホにはハッキングツールが入っている。それでドローンをハッキングできればいいが……だがそれよりも——
「まずは皆の命だ……陽菜……どこへ行ったんだ……!?」
 彼が把握している要救助者の残り7人は、親友の英介に、彼の元妻の陽菜。爆破テロの首謀者である牧師、間藤 寛治(マトウ カンジ)。英介の新婦である芹香の父、真也。その他行方不明の式場スタッフ3名だ。
「母さん!最後まで付き合うと決めたんだろう……?陽菜と他の人はどこにいるんだ……?」
『陽菜ちゃんなら大浴場辺りで見えたわ……』
「大浴場……39階か」
 コツ……コツ……
『本当に行くの?』
「ああ……もう時間がないからな……!」
 ダッダッダッ……!

松之原タワー 36階 美術館 21:48
 キュウィィン……
「皆下がるんだ……!俺が何とかする!」
 将佑たちを消そうと、数機のドローンが冷たい銃口を向ける。被弾する前にどうにか止めなければ……どさくさに紛れて英介は彼の前から逃げようとする。しかし——
「逃さねえぞお前……」
「何……!」
 彼は灯油が撒かれた床を滑らないようにバランスを保って英介に体当たり!
 ドテッ……!
「借りるぞ……!」
「おいそれはダメだ……!」
「ゴチャゴチャうるさい!」
 ビリビリビリ……!ビリビリビリ……!
「……!効いてる!」
 彼の予想通りドローンには電流が効果的だった。
 ビリビリビリ……!ガシャーン……
「はぁ……」
 ギロッ……
「うぅ……」
「幸人の親友だとしてもこれは重罪だぜ……これは幸人でも許してくれないかもな……」
 下着姿の彼に詰め寄られる英介。すると——
 ドテッ……
 突然英介が土下座をする。
「許してくれないなんて、そんなことはどうでもいいんだ……!あんた幸人の仲間なんだろ……!?」
「何のマネだ?仲間……まあそう言っておくか……」
「頼む……あいつを止めてくれ……!あいつはもうゾンビになっている……!もう俺たちが知る幸人じゃなくなっちまったんだ……!」
 英介はスマホを操作すると美術館のスクリーンに何やら映像が流される。監視カメラの映像か?それにしては映像の動きが激しすぎる。
 キュウィィン……
「ドローンで撮影か?……これは!ゆ……幸人……!?」
「幸人って、あのゾンビマンがですか……」
「これ人間ですか……?」
「……」
 映し出されていたのはドローンと戦っている幸人の姿。仲間たちの第一声が『ゾンビ』、『人間じゃない』という心ない言葉を受けた将佑は、親友として何か言いたい気持ちをグッと堪える。
「あんた見たことあるか?幸人が耳を当てる仕草……」
 スッ……
「何かこうやってやるやつだろ?」
「あれ……何を意味しているかわかるか?」
「先読み……」
「やっぱりわかっていたのか……あれは、未来察知能力だ」
「そういう類だと何となく思っていたよ」
 将佑もやはり最初に会ったときから予感はしていた。
「あいつのことは俺なりにわかっているさ……少なくとも俺が言える奥田幸人は、自分が見た未来を意地でも変えようとする熱い男だってことだ……」
「……」
 英介は幸人を親友ではなく、都合の良いヒーローとしか見ていなかったのかと考えていた。将佑の言葉を聞くまでは。幸人と将佑は会って1日も経っていないのに、彼の方が幸人の親友に相応しい、2人こそベストフレンドに等しい。
 バチッ……
「立ち話していても仕方な——ってマジかよ……!?」
「ヤバヤバ……!」
 破壊したはずのドローンが時間差で爆発を起こし、撒かれた灯油に引火してしまう!
 ボオオオォ……!
 将佑は拘束を解いているが、他6名の隊員は椅子に縛られた状態だ。当然必死で拘束を解こうと椅子を揺さぶる。
「何か刃物——っていねえ!?」
 英介に視線を戻した頃には既に姿がなかった。こうなったら仕方ないと、壊れたドローンのプロペラを拾い——
 キリキリキリ……
 ドローンのプロペラはかなり小さくて結束バンドが中々切れない!彼がまず拘束を解くのは18歳の間宮希穂だ。
「間宮!俺が拘束を解いたら、ホースを探してくるんだ!この階にもあるはず……俺が拘束を解いている間に火を消してくれ!」
「嘘でしょ!?私裸足で熱い床走れっての……!?」
「悪いな……一番若いのはお前だし、初現場で初陣にはちょうどいいだろ!」
 ブチッ……
「帰ったらジャンボパフェ奢りですからね!」
「任せとけ……!」
 キリキリキリ……
 希穂は裸足で熱くなりながらホースを探しに走る。炎の広がりが大きい。希穂は普段ふざけているが消防士としての素質は本物。将佑が伸びしろだらけとお墨つきをするくらいだ。
 ブチッ……
 次に拘束を解いたのは茉莉花。彼に続き——
「私もやります!」
 茉莉花もドローンのプロペラを拾って結束バンドを削る。茉莉花の協力により一人、次にもう一人と拘束を解いていく。その頃——
「持ってきましたよぉ!」
「さすが早い!」
「水出します!気をつけてくださいねぇ……!」
 シャー……!
 希穂は小学生から高校を卒業するまで柔道をやっていたためパワーは男勝りだ。訓練が浅くてまだ手元はブレているが、それでも的確に火に水をかけ続ける。
 キリキリキリ……ブチッ……
「ヤバいブラズレる……」
 消火中のギャルは下着のズレを気にする。それでも水の勢いを一切弱めることなく——
 シャー……ジュゥゥ……!
「消えたっ……!」
 キリキリキリ……ブチッ……
「こっちも切り終わったぞ!」
 美術館を包んでいた炎は完全に消火された。将佑が信じた通り、希穂はやるときにきちんとやる女だった。
「これからどうします?僕たちほぼ裸ですし……」
 防火服は全員奪われており、何をするにしても装備を回収しなければ行動がかなり制限される。
「まずは皆を避難させる」
 将佑はそう言っているが、なぜか視線が仲間たちに向けられている。まさか——
「もうこのビルはもたないかもしれん……君たちは本当に活躍してくれた。かけがえのない命だからこそ、今は君たちを避難させる……」
「そんな……!?私たちは最後まで残ります!」
「小隊長だけおいしいとこ持っていくのズルッ……!?」
「稲田……ならお前はどうするんだ?」
「俺はまだ、親友を助けるという最大の仕事が残っている……」
 彼の言葉を聞いて、最初は納得していなかった希穂と茉莉花も自然と納得したようだ。むしろゾンビになった幸人の身も心も救えるのは、稲田将佑しかいないかもしれない。だが幸人を救うには防火服を回収しなければ……
「貨物用エレベーターで屋上まで上がるぞ……!」
「わかりました!」
 ビルの全焼具合的にもう各階にヘリを近づけさせることはできない。解決策が見つからないにしても、リカバリーポイントは屋上しか残されていない。だがそんなとき——!
「将佑!」
「……!この声は……?」
「将佑……!」
 ダッダッダッ……!
 何と将佑たちの前に現れたのは幸人だった。それに式場スタッフと思われる男女3名を連れている。
「幸人!?あんた無事だったんだな……?それにこの人たちも?」
「博物館を歩いていたら故障したセキュリティ室があってね……閉じ込められていたところを助けた……」
「そうだったのか……」
 幸人はマスクを着用することなく顔を出している。それでも皆を救うという信念なのか、真っ赤な目が死んでいない。それに——
「その格好じゃ恥ずかしいし公然わいせつだろ?2人分だが防火服が落ちてた……」
 ガシャン……
 幸人は途中で防火服を回収していた。やはりこんな大規模な火事場で防火服が脱ぎ捨てられているのはありえないと考えたのだろう。とりあえず2人分のようだ。防火服を着用したのは将佑と、もう一人は最年長の浦田太輔だ。
 コソコソ……
「ねぇ……あの人が小隊長の言っていた幸人って人よね……?」
「うん……想像以上のゾンビだわね……」
 まだ若い希穂と茉莉花は幸人のことについて陰口を叩いている。
「助かるぜ幸人!こんなに早く防火服着れるなんてな!」
 運がいいことにサイズはバッチリ。さらに酸素ボンベの残量はほぼマックスだ。幸人はこのまま陽菜がいると思われる大浴場に向かおうと思っていたが、一旦予定変更。まずは将佑たちと共に式場スタッフの加藤 大助(カトウ ダイスケ)(33)と下山 静香(シモヤマ シズカ)(22)、遠藤 慶次(エンドウ ケイジ)(55)を救助する。だが——
「幸人!この人たちは俺に任せてくれ!」
「将佑!でもあんた……」
 将佑は顔を大火傷している。
「幸人にはまだやることがあるだろ?すぐに俺もあとを追う。あんたは行け!」
「すまない……頼んだぞ!」
 ダッダッ……
「将佑!」
「どうした?」
「俺が見た未来だが、0時を迎えた頃にこのビルは全壊する……」
「何だと……」
「全壊!?」
 将佑は冷静に聞き入れたようだが、他の消防隊員と要救助者は目を見開いて見つめ合った。
「心配するな……俺に考えがある。全壊は免れないかもしれないが、悪い結果にするつもりはない……」
「幸人……」
「俺に任せろ……また後で合流しよう!」
 ダッダッダッ……!
「稲田……」
「はい……」
 貨物用エレベーターなら全員乗せて屋上まで一直線だ。屋上は当然だが屋外になる。防火服を着ていない場合は炎と冬の冷気が身体を襲う。

松之原タワー 屋上 ヘリポート 22:11
 ボオオオォ……!
 やはり、屋上も既に燃え広がっていた。熱い炎と冷気が体力を奪っていく。
「すみません……寒すぎます……」
 最初に寒さで倒れかけているのは40歳の杉本麻耶だった。その場で体育座りして止まってしまう。すると——
「杉本さん……すみません!」
 幸人に腹を殴られた瀬川大夢が麻耶を抱きしめるように温める。
「もう完全に抱き合っちゃってるし……瀬川さん確か麻耶ねぇのこと好きだもんね!?」
「間宮お前……余計なこと言わないでくれよ……!」
「いちゃつくなら帰った後ゆっくりな……まっ、俺はそんなお前たちが大好きだぜ……」
 大夢は希穂の言う通り麻耶に好意を寄せている。麻耶は離婚歴があって子どもはいない。
「もうバレたから言います!帰ったら俺と、温泉でも行きませんか……!?」
「まさか混浴するつもりじゃないわよね……?まあ、もう恥ずかしいの見せちゃったから、いいわよ……」
 大夢と麻耶のやりとりに将佑は苦笑い。彼にも妻と結婚する前は、ラブラブな時期もあったものだ。
「ヘリが飛んでいないな……」
 このままでは凍傷の問題も生まれる。炎……冷気……
「あっ……!」
 炎が使えるじゃないか。もちろん引火しないようにだが、燃えている炎はときにヒーター代わりに使うことができる。
「俺と浦田さんでヘリが来るまで火を消し止める!それまで待っててくれ……!」
 屋上はまだ建設中で大型のクレーンが設置されていて、業火に包まれている。これがもしタワーから落下したらどうなるかは想像したくないだろう。
「……」
 屋上からライトアップされた東京タワーが見える。建設されてから一切ビクともしなかったタワーと、今にも崩れそうなビル。それが同じ港区にそびえ立っている。
 ザザッ……
「頼むつながってくれ……」
 ドガァァン……!
「クッ……!?マズいな……ここも長くはもたないぞ!稲田……!」
「わかってます……」
 幸人の言葉が本当なら全壊まで約1時間45分……
「(親父……俺がガキの頃、サンタさんが親父だなんてもちろん知らなかった……俺が皆の命を救って、家族のもとへ帰す……なんてプレゼントができるわけないだろ……)」

 ——「将佑!明日パパ帰って来るって!クリスマスまで間に合うわよ!」
「パパ帰って来るの?ヤッター!」
 親父は誰からも尊敬される消防士だった。仕事が忙しくて家を空けることが多かったが、俺はそんな親父のことが好きだった。あの日のクリスマスパーティーのデコレーション……俺はずっと忘れられない。しかし——!
 プルプルプル……!プルプルプル……!
「はい稲田です……?はい、ええっ……!?主人が……!?そ……そんな……!?」
 なぜ俺は、いつも親父に『ありがとう』を言えなかったんだろう……まだ4歳だった俺は、親父が殉職したなんて受け入れられなかった……『損壊が激しい』と説明されて俺は立ち会えなかった。だけど、約束した……だろ……!今年のクリスマスは一緒に祝おうって……!
「パパ……」
「将佑……これ、サンタさんからのプレゼントよ……パパ……の……」
 プレゼントの中身は俺がずっと欲しかった消防車のミニカー。
 コロコロ……スーッ……
「……パパ!」
 それからだった。俺が消防士を志したのは……俺は親父のような尊敬される消防士になれているのだろうか?少なくとも、親父は俺なんかより、もっと熱くて痛い場所で戦っていたんだ。炎と戦える俺だから、今消防士になれたんだ!——

「稲田……!」
「はい……行きましょう……!(親父見ていてくれ……!)」
 母親は存命で遠方で暮らしているが、彼も幸人と同じ、親を失った者同士だった。親の話を幸人とするのはあまりよくないのかもしれないが、いつか話せるときがきたら聞いてみたいものだな……
「俺が消火器で少しでも時間を稼ぐ!稲田はクレーンの火を消してくれ……!」
「わかりました!」
 屋上に設置されていたホースは一つ。クレーンの火を消すことが最優先だ。
 シャー……!
 将佑の目に再び決意が宿る。親父のようにはなれないかもしれない。幸人のように強い意志を持てないかもしれない……!だが俺は消防士、稲田将佑なんだ!
「おいおい……!もう時間がないってのに頑張る人たちだなぁ?」
「……!?誰だお前は……?」
「言わなくてもわかるだろ?首謀者だよ……首謀者!」
「……!まさかお前がビルを……!幸人の親友を利用したのもお前か……!?」
 遂に将佑たちの前に現れた牧師、この事件の黒幕。間藤寛治だ。なぜ屋上に?
「これ何だかわかるか?」
「テレビのリモコン……ってわけじゃなさそうだな……?バカなマネしようって思うなよ……」
 だが将佑が感じた微かな違和感。奴が左腕につけているG-SHOCKの腕時計……このモデル、幸人がしている時計と全く同じ。まさか——
「お前……幸人はどうした……!?」
「幸人……?あのゾンビ野郎か?今頃大浴場に沈んだかもな……」
「……!何だと……テメエ……!?」
 ガチャッ……
「おっと動くなよ……?これを押したら屋上の爆弾が——」
「やめろ……!」
「ドッカーン……!」
 カチッ……ドガァァン……!
 爆発が起きた場所は、茉莉花たちのいる場所の近くだった。
「うわ何だよ……!?」
「キャア……!?」
 民間人の加藤大助と下山静香、遠藤慶次は突然の爆発にパニック状態だ。まだ凍傷を負っていない豪と大夢、希穂が3人を落ち着かせようと寄り添う。しかし——!
 ドガァァン……!
 爆発の衝撃で削れて鋭く尖った鉄パイプが飛ぶ……その矛先は、大夢へ一直線に飛んでいく……
「うわっ……!?」
「危ない……!」
 麻耶が力を振り絞って立ち上がる……その瞬間——
 ブスッ……
「うぅ……!うぅぅ……」
 ポタポタ……
「麻耶さん……?麻耶さん!」
「麻耶ねぇ!?」
 麻耶は大夢を庇い、鉄パイプは麻耶の脇腹に冷たく突き刺さった……
 ドテッ……
 力なく膝から落ちる麻耶。
「麻耶さん……どうして……俺なんか……!?」
「温泉行きたいんじゃな……いの……?でも、私がし……んだら……一緒には無理ね……」
「麻耶さん……麻耶さん……!そんな……!」
 麻耶はそのまま目を閉じてしまった。鉄パイプは突き刺さったまま、彼女の身体を内側から焼いていく。間藤はまた冷酷にスイッチを押そうとするそのとき——!
「やめなさい……!」
 ダッダッ……!
「うぅー……!」
 ドカッ……!
「水口……!?」
 茉莉花が風を切るように突っ走って間藤へ体当たり!そのまま羽交い締めにするが……
 キュウィィン……
「またドローン……!?水口逃げろ……!クソッ……!」
 将佑はホースを離して茉莉花を助けるために走る。
 ガチャ……ガチャ……!
「水口……!」
 ダダダダン……!ドカッ……!
「ウゥ……!無茶するな……!」
「小隊長……」
 一体ドローンを何機用意している?
「待て……!」
「悪いな……!生きて帰れたらいいなぁ!」
「クソ……!」
 間藤は屋上の手すりに取りつけられていたロープを伝って逃げた。黒幕はビルの構造を知り尽くした上、脱出ルートまで確保しているとは……
 ビリビリビリ……!
 まだ英介から奪ったスタンガンが使えた。一旦ドローンの攻撃を退けることに成功する。ちょうどその頃——
 ブルルルル……!
「ヘリが来たぞ……!」
「聞こえますか小隊長……!?今からヘリを寄せます……!」
「頼む!9人のうち一人は重傷だ!杉本さんから乗せたい!」
「わかりました!」
 ブルルルル……!
 ヘリから降りた救助隊が麻耶たちのもとへ駆け寄る。
「麻耶さん……」
「このまま乗せるのは危険だ……止血準備!」
 ポトポト……
「うぅ……!?」
 麻耶はまだ生きている……!幸いにも内臓には突き刺さらなかったようだ。
「ごめんね大夢……温泉は……しばらく無理そうよ……」
「麻耶……」
「いきなり呼び捨て……覚えておきなさいよ……」
「えへへ……」
「感動はまだだぜ?まずは帰って、メシ食うことだ!」
 幸いにもヘリには要救助者全員が乗れる。麻耶を最初に、将佑を除く消防隊員と被災者が乗せられていった。将佑はまだ帰らない……親友をこの手で救うために——!

瀬川大夢(32) 救助
原田豪(33) 救助
杉本麻耶(40) 救助
間宮希穂(18) 救助
水口茉莉花(24) 救助
浦田太輔(57) 救助
加藤大助(33) 救助
下山静香(22) 救助
遠藤慶次(55) 救助

松之原タワー 屋上 ヘリポート 22:43
 これで松之原タワーに残っている人間は、稲田将佑に奥田幸人。西川英介、英介の新婦・芹香の父、後藤 真也(ゴトウ シンヤ)。あと幸人の元妻である成瀬陽菜だ。そしてテロを引き起こした張本人、間藤寛治も要救助者に入れていいだろう。屋上から下を見てみれば、消防車に救急車、パトカーが何台もビルを囲っている。だがこのままじゃマズい……崩落の時間を迎えてしまったら瓦礫に呑まれてしまうぞ……どうにかして退避を促せないか?
 ゴゴゴゴォ……!キュウィィン……
「またかよ……!?いい加減に——」
 爆発に続いてまたドローンか?だが——
「……?」
 なぜかドローンは彼を一切攻撃することなく、は港南アイランドブリッジとは反対側へ飛んでいった。すぐに見えなくなったのだが、遠くから見た感じだと降下していくように見えた。
「何なんだ一体……?」
 今は気にしている場合ではない。それよりも幸人だ!間藤の奴、『大浴場に沈んだかもな』と言っていた……
 ガチャッ!ガチャッ!
「待ってろ幸人……無事でいてくれ……!」

・瀬川大夢、原田豪、杉本麻耶、間宮希穂、水口茉莉花、浦田太輔、加藤大助、下山静香、遠藤慶次の救出により残留者は全6人。
・12月24日 22:45 タワー崩壊まで1時間15分……
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