おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 順序が、逆だろ。なんで先にセックスするんだよ。ちゃんと互いに惚れあって、信頼関係を深めるのが先だろ」

 くすっとわたしは笑った。「浅葱さんって……案外、真面目なんですね」

「女の子なんだからからだは大事にしなきゃ駄目だろ。……我ながら、先ほどからいかにもおっさんくせえ説教かます自分にうんざりもしているが。そもそも自分のからだを大切にしない女は好きになれんよ。……おまえ。一人前の社会人目指すんなら、そこんとこ――異性関係も、適当にやってちゃ駄目だろ。おまえが傷つくと、おまえを育ててきたひとたちや関わってきたひとたちも傷つくんだぞ」

 ……はあ。「斬新、ですね……その視点はわたしにはありませんでした」

「こういうとき、親が泣くとかいう切り口でも説得出来んだがな」と言って頬杖をつき、わたしを見つめる浅葱さん。「知ってるか? 新入社員ひとり育てるのにどれだけのコストがかかるのか。ひとりあたりうん百万じゃ済まないんだぞ。……きみが自分を犠牲にするということは、その、尊い人間の財産や努力も――無下にするってことなんだ。

 まあいい。慣れない環境で疲れてるってのもあるんだろ。とにかく寝ろ。
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