おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 胸にはまだ、余韻が残っている。……わたしたちは、一人で生きているのではない。必ず、誰かの――愛を受けて、生きている。

 何故なら。

 人間は、ひとりで生まれることは出来ないから。出産という壮絶な、命がけの行為を通して生み出された尊い命。その後がどうなれど、その瞬間、確かに、母と子は繋がっている……愛とともに人間は生まれてくるのだ。誰かに愛された記憶とともに。

 だから。

 ひとりぼっちの人生が寂しいとまでは思わない。理屈では分かっている。人間は――一人ではない。

 けれど。

 こうして海風をひとり浴びていると浮かんでくるのは必ず――あなたのこと。

 元上司であるゆえに、友人席に座るわたしとは別の席だった。……結局、なにも言えず、ここに……来てしまった。

「……っ……」

 大好きなのに。愛しているのに。どうして――伝えられない。

 わたしは、いつになったら、自分を許せる? 本当の気持ちで、あなたと――向き合える? そもそもあなたに誰か恋人がいるかどうかすら知りもしないのに……わたしって。

「勝手、だな……」
< 116 / 225 >

この作品をシェア

pagetop