おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 どこかでお茶でもしようか、と笑い合う同僚や友人を置き去りにするくらいには薄情な人間だ。――麗奈なら。こんなわたしのいまの孤独を受け止めてくれるのだろうか。違う。やっぱり――

「おれのことで泣いてる?」

 聞き違いかと思った。でも――違った。

 手すりを掴み、そっと泣きむせぶわたしに声を――かけたのは。

「望海。……久しぶりだね」

「な……」拭うことも忘れ、わたしは、「なんで……浅葱さんが、ここに……」

「山口くんに頼んだんだ」舌を出す浅葱さん。「おれは、今日、このとき、この場所で……おまえに、会いたかった。

 会って……気持ちを、確かめたかった」

 ――やだ、浅葱さん。「ご、誤解しますよその発言……」たまらずわたしは下を向いた。「それに。わたし、……あなたを裏切った人間なんですよ。あなたと向き合う資格なんかない――」

 顎をくいっと掴まれていたと思ったら既に唇を奪われていた。間近にて、花のようにあでやかに笑う浅葱さんは、

「おまえが、好きだから……。待っていた」

「……っ」ぶるぶると。唇がふるえて、あふれるものが止まらない。視界が滲んでしまう。
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