おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 終わった話だというのに、いまだ、胸を締め付けるこの感情。だから、おれには、おまえの気持ちが分かった。おまえが――加藤くんへの恋を、簡単に捨てられない気持ちが。おれにもそんな相手がいるから。どうしようもないほどに焦がれて、焦がれて、なのに、手に入らなかった永遠の存在だ。

 さて――帰ろう。

 残るは加藤くんだけだ。会社の連中の情報によると、どうやら、笹塚くんは、加藤くんに気がありそうな雰囲気らしいのだが……加藤くんが、過去の呪縛から解放されることを願う。……おれのように。

 いまのきみに過去を語る必要はない。おたがい乗り越えたのだから。終わった話を蒸し返しても仕方がないではないか。――と思っていたのに、間もなく、きみは、おれの、過去の恋を知りやがて――苦悩する。

 このときのおれはまだ、残酷な運命を知らず、鼻歌を歌いながら夕焼けに染まる帰り道を呑気に――歩いていた。

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