おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 寒々とした空気にさらされ、デコルテも、鳥肌の立った素肌も痛々しい。見ていられずおれは――琉実を、支えた。「……家まで送る。だが、それ以上のことは、しない。……出来ない」

 おれの腕のなかで琉実は泣いている。その事実に胸がきしむように痛んだ。「分かった。……今日だけ、傍にいて。……ごめんなさい。あなたにとって、今日が、……大切な日だというのに」

 そのタイミングでおまえがおれの前に現れた。……悲しかった。切なかった。すべてをぶちまけられない己が呪わしかった。……望海。本当に、おれが、一番愛しているのは、おまえなんだ。おまえ以外に人生を共に生きていきたい女など見つからんよ。そのことは断言出来る。

 なのに。

 おれは、……放っておけない。目の前で、……海に溺れている子がいたら迷わず助ける。おれが琉実についてやるのはそういう論理だ。けども、大切な日を台無しにされたおまえに話したとてなんになろう。そしてそんな素晴らしい日を汚したくはない。

 ここまで考えたときに、おれは、琉実の言っていることを実感として理解出来た。……おれが琉実でもそうするかもしれない、な……。
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