おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 唇に赤いグロスを塗ったところでメイク終了。――で。声を、かけた。そのときのおまえは――ずっと閉じていた目を見開かせたおまえは、ドレッサーの鏡のなかにいる美しき女性の姿を認めると、花のように、あでやかに笑った、ほんのちょっと頬を赤らめて……。

 鏡よ鏡よ鏡さん。世界中で一番美しき女は誰? ――椎名望海。

「……素敵……」目に涙さえ浮かべるのだ。「ありがとうございます浅葱さん……本当、素敵です……」

「今回は、シンプルメイクにした」と椅子の背を支え、鏡のなかのおまえを見つめて言う。「肌は下地要らずのナチュラルファンデ。眉はパウダーとマスカラ。アイライナーはペンシルでマスカラはせっかく長いまつげを活かすべくオレンジブラウン。頬に赤みのあるチークで、唇は透け感のある赤いグロスにした。……というか、新品でなくてすまないな……手持ちのものを使った」

「いえいえ全然!!」顔の前で大きく手を振るおまえ。相変わらず素直な性格してるよな。「すごく、……嬉しいです……こんなに綺麗にしてもらえて……自分が自分じゃないみたい……」
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