おれが、おまえを、可愛くしてやる。

◆#12. 浅葱蓮二、当惑する。

『お昼休み中にごめんね』
『加藤くんが、話あるみたいで帰りにコーヒー飲んでくる』
『たぶんスタバ』
『帰る時またメッセするね』

 複雑である。加藤の気持ちが手に取るように分かるからだ。『分かった』とだけ返信してスマホを後ろポッケに入れ、口をゆすぐ――と、背後に人影。

「多賀《たが》さん」とおれは話しかけた。「今朝の件ですけど……おれ、暴走してなんかすみませんでした。下手に勘繰られるよりかは自分から公表した方が、やりやすいかも、という自己判断でした」

「きみの気持ちは分かっていたからね」と多賀さんは隣に来ると石鹸で手を洗う。「今日日、職場恋愛なんて珍しくもないよ。きみも知っての通りでね。……『もふパラ』はどうする?」

 おれは迷いなく言いきった。「おれのほうが、『手放し』ます。

 ……椎名はまだ入りたての新人ですし、三年は、同じ場所で修行させてやりたい。……退くべきなのはおれのほうですね」

 * * *
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