おれが、おまえを、可愛くしてやる。
『……久しぶりだね加藤くん。あたしのこと、覚えている?』

 ……そう、笹塚さんに話しかけられたとき、返答に窮した。大学時代からぼくは生まれ変わったのだ。あの頃の自分とは違う。

 笹塚さんは、二年くらい、同じ小学校のクラスだった。やがて親の転勤で笹塚さんは引っ越していった。当時、別に、笹塚さんはぼくを差別する節もなく、ただ、違うグループなので話すチャンスがなかった、といった程度の間柄だった。望海とも同じクラスにはなっていない。

『椎名さんとも同じ会社なんだね。……すごい縁だね。これからもよろしくね』

 それから、新人研修で、アプリを実際に開発するプロジェクト研修があり、笹塚さんと同じチームになり、リーダーを笹塚さんが務めることになった。……女性がリーダー役を受け持つのは実は珍しい。研修内では、暗黙の了解で、男性が担当することがほとんどだった。ただ――笹塚さんには。

 周囲を納得させるだけの力が、あった。

『制限時間は長いと飽きちゃうから60秒くらいでいいと思う』
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