おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 あるとき、ふたりきりになったときに、ふと、笹塚さんが言ったのだ。『……加藤くん。わたしがPLで、最初は納得してなかったでしょう? 女だから』

 否定しなかった。『ごめんなさい。でも、いまは……。きみが適格だと思っているよ。ぼくたちは素晴らしいチームだ。率いたのはきみだ』

 ふっ、と笹塚さんは笑った。『……加藤くんのようなひとに認められて光栄です。ありがとう』――そのとき。それだけで、気持ちが燃え上がったような気がしていた。ぼくはてっきり……自分が、笹塚さんを好きなのだと思っていた。

 だが。違った。

 職場にも徐々に慣れてきた金曜日の夜。部署全体での新人歓迎会をしよう、ってことで、事前に新人が場所を押さえておき、会社の近くのお座敷のある居酒屋へと向かった。歩いているその途中で、たまたまぼくの隣にきみが来た。……きみとは、入社してからも、そもそもろくに、喋っていなかった。……きみは、地味で、すこし……女子のなかで浮いている節があった。それでもぼくはなにもしなかった。出来なかった。

 女子には女子同士の輪があり、男はそれに入れない空気があった。
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