おれが、おまえを、可愛くしてやる。
 一部の女子は明らかにきみをハブっていたのだが。山口さんが、気にせず、きみに話しかけていたから、……それでいいと思っていた。

『純平。……研修のとき、すごかったね』

『いやいや』とぼくは首を振った。『ぼくじゃない、笹塚さんのおかげだよ』

『……そうだね』

 見れば、笹塚さんは、老人女性に近寄って、そのひとの落とし物を手渡していたところだった。……ああいう親切なところが、彼女にはある。まぶしいようなものを見る目になるのが、自分で分かった。
 
『笹塚さんってすっごく……魅力的なひとだよね。誰が惚れてもおかしくないくらいに』

『あ……そ、そうだね……』何故か声を弱めるきみ。『そんじゃ、わたし……先行っているね。また、後でね』

 ――後からきみが、居酒屋の廊下でこっそり泣いていたことや、飲み過ぎてリバースしたことなんかも聞いた。そのときにはもう、遅かった。ぼくの知らないあいだに、きみは……あいつのものになっていた。
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