偶然の再会から外交官の溺愛が止まりません
 その言葉に依織はホッとした。
「それならよかったです。一応、こぼれにくいマグで入れてきましたので」

 カバンからステンレスマグのうちのひとつを取り出した依織は、ぱっと蓋を開けて東條に差し出す。

「ありがとう」
 嬉しそうに東條が受け取った時、よかったと依織はホッとした。

「ん? 桜葉さんは? 飲まないの?」
「あ、私の分もあります」
 依織は自分の分をカバンの中から取り出した。

「なんだ……あったんだ。間接キスかと思ったのにな」
 独り言のようなその声はは依織の耳に届いていなかった。

「なんですか?」
「いや、なんでもない。わざわざありがとう。うん、香り高くてすごくおいしい。いや……本当にうまいな。正直、すごく好みの味だ」

 東條は真剣な顔をしていた。
 その横顔を見ていて、つい依織は笑いそうになってしまう。
 それでも改めての言葉は、心からの気持ちを表しているようでとても嬉しい。

「私は酸味を抑えたマイルドな味が好きなんです。お好みでよかった」
「俺も酸味はあまりない方が好きかな。この豆を買える店は家から近いの?」

「近いです。歩いて五分くらいですね」
「じゃあ、帰りに買って帰ろうかな」
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