`未完の恋、指先で溶かして
『真紘の好きな女性に会った』

「え?」

『そう言われたわけじゃないけど、真紘がその女性現れた途端に同様するんだもん。私の前で焦る姿なんか見せたこともないのにさ』


 真広は笑っていたけれど、その声はどこか痛々しく響いた。

 好きな女性、と言い当てた時点で、相手は森山で間違いなかった。

 俺は何も言わず、ただ真広の次の言葉を待つ。


『…でもさ、何か悔しくも、悲しくもならなかった。この人が好きな子なんだって思って、真紘の顔を見たら、私の時と違いすぎてそんな気も失せたし、それに…、私本当に真紘をもう好きじゃないんだって思ったんだ』

「好きじゃない?」

『…会って話したい』


 そう言われ、モニターに映る仕事の進捗を確認する。急ぎの案件はもうないし、どうせこのまま残っていても指一本動かせそうにない。

 思考の端で、俺は前回のことを思い出していた。

 自分の弱さに負け、真広と肌を重ねたあの夜のこと。その後もなんだかんだといつも通り会話はできているけれど、気まずさがないわけじゃない。特に今は、俺自身が真広との関係に答えを出せずにいる時期で。

 今会ったら、自分の感情が今度はどんな風に揺さぶられるのか。それが分からなくて、少し怖い。

 だけど、ほんの少しだけ会いたいと願ってしまっている自分もいて、矛盾した思いは強まるばかりだった。


「………わかった。どこで会う?」


 どこまでも意志が弱い自分に呆れつつ、真広にそう問いかける。


『…家に、行ってもいい?』


 そんな聞き方をされて、ダメだなんて言えるわけがない。

 俺は小さく溜息を吐いて、「わかった」と返事をした。
< 61 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop