再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。
***
それから私は二日間熱を出して寝込んだ。あのピリッとした痛みによるものなのかはわからないけれど、どうやら私の体内にわずかに残っていた魔力が暴走しているようだった。
「くっ……やっぱりまだダメか」
セイロン様が私の暴れる魔力を鎮めようとしてくれているものの、うまくいかないらしい。
「セーラ様。もしかしたら、魔力の拒絶反応が起きているのかもしれません」
「拒絶、反応……?」
「はい。セーラ様は今回、召喚の際に魔力を失っていました。そこに無理矢理魔力を譲渡し女神様からの加護も受け取り、一瞬馴染んだように見えましたが……お身体が耐えられず悲鳴をあげたのかと」
「そんな……」
つまり、セイロン様からの魔力の譲渡を受けられないのは私の身体が拒絶しているから?
「女神様へのお祈りが弾かれてしまうのも、もしかしたらこの拒絶反応が原因なのかもしれません。女神様が弾いているのではなく、セーラ様のお身体が弾いているやも」
もしかして、だから女神様が怒っているように見えたの?
毎日加護をくださっていたのに、急に私の身体が弾いたから?
「魔力が暴走してるのも、そう考えると説明がつきます。おそらく間違いないかと」
「じゃあ、どうすれば……」
「まず、暴走した魔力を鎮めなければなりません。しかし……」
「な、に?」
言いにくそうに口をつぐむセイロン様。話すように促すと、
「通常であれば、魔力をさらに譲渡してコントロールすることで暴走は治るはずです。しかし、今は譲渡ができない状況です」
「は、い」
「ですので。暴走を抑えるために今できることは……セーラ様の体内の魔力を、全て取り除くことになってしまうのです」
頭を、ガツンと殴られたような衝撃だった。
「魔力を、取り除く……?」
「はい。つまり、セーラ様は再び魔力を失います。言葉が通じなくなってしまうということです」
また、何も言葉がわからない世界になってしまうの?
「それ、は……抜いた後に、また魔力を譲渡してもらうことはできるんですよね?」
「……わかりません。そもそも魔力というものには少なからず相性があります。カイエンが一番最初に微量の魔力しか送らなかったのも、相性が悪くないかを確かめるためでした。しかし暴走してからはカイエンも弾かれ、僕も弾かれてしまっている。一度抜いたとしても、またセーラ様のお身体が受け入れてくださるかはわかりません」
「そんな……」
「譲渡を行えるのも、上位神官以上の地位と強い魔力の持ち主にしか認められておりません。数が少ない中で、セーラ様のお身体と相性の良い魔力の持ち主がいるかどうか……」
つまり、相性の良い人が現れない限り私はもう二度と体内に魔力を取り込むことができない可能性があるということだ。
頭が真っ白になって、熱のしんどさも相まって何も考えられない。
「ごめんなさい……少し、一人にしてもらえますか……」
「……承知いたしました。失礼いたします」
セイロン様もミレアもアレン君も部屋を出ていき、一人になる。
身体の中で、何か得体の知れないものがぐるぐると暴れている感覚。これが拒絶反応による暴走なのか。
汗も止まらず、呼吸も荒くなる。
病気や風邪ではないから魔法で治せるものでもなく、とにかく魔力をどうにかするしかない。
「……ロードさまっ……」
無意識に呟いた名前に、返事が聞こえることはなかった。